当日の状況 フェイスブック記事より

どうにも怒りが収まらないし、首にかかる布団の端も息苦しく感じるので、書くことにする。とても眠れない。
 
僕はミスコンに反対するわけじゃない。反対というと規制するようで居心地がわるいからだ。ただ、そのクソさについては表明したいと思った。それで、ビラを作って会場へ向かったのだ。もう学生じゃないけれど、大学は公共空間だからありだろう。
で、何人かで壇上に上がろうと突入したのだ。
 
大半の人は突入するというだけで、悪いことだと言うのかもしれない。しかし、経緯を考えてみよう。今回のミスコンについては、ミスコンに反対する会が結成され、中止を要求していた。祭りの運営側のコメントは、検討したところ今年はやります的などうしようもないものだった。詳細が知りたければ反対する会のツイッターを見てほしい。
説明会も開かれないなら、もう直接行動しかない。このまま黙ることは非民主的である。話し合うにも、まず妨害が必要だ。
 
突入時の運営スタッフの対応は予想外のものだった。結局僕らは壇上にものぼれていない。お揃いの上着を着て警官ごっこに陶酔する下衆どもは、突き飛ばし、投げ飛ばし、締め付けてきたのだ。泥だらけだ。突入した人間はおそらく全員が、どこかしらからは出血しているだろう。しかし、運営の連中は誰一人傷を負ったりはしていないに違いない。示し合わせたわけではないが、僕らは非暴力に徹していた。
露骨な暴力をもって弾圧を続けるあいだ、奴らはこんなことを言っていた。
 
「こっちのほうが数が多いですよ~」
 
「警察呼びますよ~」
 
数が多いからなんなのかは全く不明である。そんなことは百も承知だ。それに警察を呼んで困るのは法的に考えても明らかに運営スタッフの方である。奴らは完全にどうかしている。
 
何人かは、ステージから少し離れたところで運営スタッフと議論を続けた。
 
僕はポジションを変えて、ビラを丸めたものを客席に投げ入れることにした。
 
3つ目を投げたくらいだろうか。左のほうから運営スタッフが近寄ってきたかと思うと、僕の首を両手で絞めつけた。
さすがにすぐに止めるだろうと高をくくった。だから抵抗しなかった。人を殺してまで開催するミスコンなどあるか? しかし、締め付ける力はどんどん強くなる。まずいと思った時にはすでに遅く、スッと体の力が抜けて動けなくなった。失神するところだ。他の運営スタッフの誰かが、「ケガをさせたらまずい」と叫んだ。
手は離れ、失神することもなかったが、喉に食い込んだ爪の痕が残った。書いている今もひりひりと痛む。

 

どうしてこんな凶暴な奴らが、学生の顔をしてうろつきまわっているのか。きっと普段は、気にくわない奴の首をいきなり絞めたりするようなことはしないのだろう。その場を支配し管理しているという自己防衛感がそうさせるのかもしれない。自分たちがこの場の正しさなのだと思っている。まるで悪びれないのである。人の目も気にしない。犯罪者に正義の鉄槌を下しているような面持である。だから警察呼びますだとかマヌケなことすら口走るのだ。こいつらは警察と同じようなものだが、警察のほうが規律が取れているぶんましであるように思う。これは妄想だが、災害時に自警団を結成して虐殺を繰り返すのは、きっと僕の首を絞めていた奴のようなマッチョの正義漢に違いないと思う。
 
絞殺マッチョを止めに入った運営の学生と少し話した。そんなにミスコンがしたいのかと尋ねると、彼はこう言った。
 
「民主主義なんで。多数決なんで。」
 
今回のミスコン開催について、そのような手続きが踏まれたとは聞いたことがない。とはいえ、多数決という言葉に腹が立ったので、民主主義というのは多数決のことなんですかときくと
 
「少数者の意見は確かに尊重しないといけないですよね。でも検討した結果、開催することにしたんです。」
 
というような応答だった。
 
「少数者の意見を尊重」というのは中学校の教科書にたしか書いてあった文言だ。空虚である。どの程度に尊重するのか。あるいはしないのか。それは多数派の意志にかかっている。そんな言葉だけで片付くなら、どんなに楽だろう。
 
高飛車だ。尊重は多数派から恩寵のように与えられるものなのか? 違う。尊重させるのだ。させるしかないのだ。やっぱり直接行動しかないじゃないか。
 
今回は運動としてはうまいやり方ではなかったと思う。これは、蜂起だった。順調な権力の作動に、意味もなく食い込んだ。十分だ。成果がほしくてやることじゃない。
 
  
まだ首に圧迫感が残っているような気がする。唾を飲み込みづらい。精神的なものだろうか。布団の端が首にかかるのが不快でたまらない。

 

 

(※この記事は、暴行事件のあったミスコン当日の夜に書かれたものです)

 

「ミスターコン」もやれば、それで良いのか?

この記事は、「ミスターコンもやれば批判を免れる」と思っている人や、「意趣返しにミスターコンをやればいいのに、何故真正面からミスコン批判を?」と思っている人、その両方に読んでほしい。

 

 ミスコン当日、イベント中止を求め楡陵祭事務局に最終申し入れをした際、当会メンバーが「ミスコンが女性差別だという認識はあるか?」と問うたところ、主催側の代表は次のようなことを言った。

 

 「今年開催されるのはミスコンテストのみとなっているが、当初はミスターも考えていた。だが事務局としてこのような企画をするのは初めてで少々手惑い、ミスターコンまでは出来なかった。そのため、ミスコンだけが残ってしまった。」(要約)
 
つまり、「ミスコンだけをやるのが女性差別なら、男女平等のためにミスターコンもやろう。」ということである。思わず笑ってしまう。しかし、そうそう簡単に笑って片付けることも出来ない。なぜなら、「ミスターコンもやります」というのは、ミスコンをやりたい側の言い訳として、「内面も重視します」と同じくらいの人気を誇るからだ。なかなか手強いのである。

 

「ミスコンだけをやるのが女性差別なら、男女平等のためにミスターコンもやろう。」というのは、何を言っているのか自分でわかってほしいところだが、わかりやすくいえば「Aさんばっかり殴ったらかわいそうだから、Bさんも殴ろう。これで平等だ!」ということである。
どっちもやめろよ、としか言いようがない。

 

つぎに、「ミスターコンをやって、仕返ししてやればいいじゃないか」という意見について。私はこれについても賛同できない。なぜかというと、それでは弱すぎて仕返しにならないからだ。

 

もし仮に仕返しのつもりでミスターコンをやるとしたら、もっと“こっぴどく”やらなければならない。つまり、かれらがこの世に生を受けてからず~~~っと、かれらを「見られるためだけの属性」として扱い、「これ以上醜くなったら殺す」と脅し、かれらがちょっとでも怒れば「可愛くないなぁ」とニヤついてみせ、そのケツを全方向から叩き続け、そのうえでミスターコンを企画しなければならない。……

(いわば、「毎日がミスターコン」的状況を作るということ)

……こうして書かれるとわかると思うけれど、これ、完全に人権侵害でしょ。
ミスコンがどういうものなのか、すこしはわかったかと思う。

(けど、こんなものでわかった気にならないでほしい。とても優しめに書いたから)

 

ちなみに、

ミスターコンの是非についてはこちらのマサキチトセさんのブログが大いに参考になる。(そのほかのことについても。)

【ICUのミスコンに反対するひとに10の質問】 - 包帯のような嘘

 

 以上いろいろと書いてきたが、ミスターコンを同時開催すれば批判されないと思ったら大間違いだぞ、ということが言いたかった。それこそ“来年度以降の参考”にしてほしいものだ。

 

 

 

 

 

 


(北大祭におけるミスコンに反対する会 荘津巴)

当会の活動の記録と、一連の出来事の経緯

「北大祭におけるミスコンに反対する会」の活動の記録と抗議の経緯を、ごく簡単にまとめました。 

 

・2016年1月末

メンバーのひとりがミスコン出場者募集のビラを構内で発見し、ミスコンが開催されるということが仲間の間で知られるようになった。

(画像:ミスコン出場者募集ビラ)

f:id:antimissconhu:20160610003649j:plain

 

・3月上旬

「北大祭におけるミスコンに反対する会」発足。

 

・4月下旬

勉強会を実施。

 

・5月7日 

ミスコン主催側である楡陵祭事務局にたいし、イベント中止を求める公開質問状を送付した。中止要求と質問の内容は以下の通りである。

 

当会は、ミスコンに反対し、開催の中止を求める団体です。ミスコンは、女性の外貌や「内面的な魅力」が常に品評の視線に晒されているという社会の在りかたを賛美するもの・象徴するものです。当会のメンバーは、日常の女性蔑視を厳しく批判することのごく当然の一部 として、ミスコン開催に強く反対し、中止を求めています。

1.楡陵祭2016年準備委員会が掲出した出場者募集チラシにおいて「待望のミスコン」とありますが、ミスコンは、誰がどういった理由で待ち望んでいるとお考えですか。

2.楡陵祭2016年準備委員会として、ミスコン開催決定理由(すなわちミスコン開催の必要性や正当性)について説明してください。

 

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・5月14日 楡陵祭事務局から、前掲の公開質問状への回答が届く。

回答内容は以下の通りである。

 

1.昨年度の北大祭における来場者に対するアンケートやSNS上にて、北海道大学大学祭(以 下、北大祭)でミスコンテストを実施してほしいという意見が多数ありました。 

2.上記の通り実施希望の意見をふまえ、今年度開催することになりました。また、新たな企 画を実施することで、北大祭のさらなる発展に寄与すると考えました。 

 

また事務局は、上記の回答と併せ、次のようなコメントもしている。

「今年度は企画立案の時点で、ジェンダーに対する配慮等が欠けていたのは事実です。

不快な思いをさせてしまったこと、深くお詫び申し上げます。」

「しかし企画運営の準備の都合上、申し訳ありませんが今年度は中止することはできません。いただいたご意見は来年度以降の参考にさせていただきます。」

 

 当会は、このような事務局側の対応について、次のようなビラを作成し、批判をした。

f:id:antimissconhu:20160610004232j:plain

 

 

・6月4日(開催当日)18:30ごろ、楡陵祭2016実行委員長および副委員長に直接会い、あらためてイベント中止を求めるとともに、「ジェンダーに対する配慮等が欠けていた」という答えの内実について、再び質問した。しかし結果としては、かれらがミスコンの持つ差別性をあまりにも軽視しているということが再確認されたのみであった。

その様子にかんするツイートはこちら↓

https://twitter.com/missconwwww/status/739109366750552065

https://twitter.com/missconwwww/status/739110507714514944

https://twitter.com/missconwwww/status/739111459137802240

 

・6月4日(開催当日)20:00ごろ 

ミスコンに対する抗議と、イベントの進行を妨害することを目的とし、ミスコンのステージへの突入を試みた。主催側は我々を排除するさいに、物理的身体的暴力を行使した。

(参考)

ツイートまとめ:楡陵祭事務局による暴行事件(1) - 北大祭におけるミスコンに反対する会 公式ブログ

ツイートまとめ:楡陵祭事務局による暴行事件(2) - 北大祭におけるミスコンに反対する会 公式ブログ

 

 

 

ツイートまとめ:楡陵祭事務局による暴行事件(2)

2016/6/6(月)の連投ツイートをまとめました。

 

 ミスコン当日のステージ突入(未遂)時のことについてあらためて説明のために連投します。

 私達がステージに突入しようとしたのは、まず第一にミスコンに反対するという意見を表明するためで、それによってミスコンの実施、進行を妨げるためでした。ただし、その際にスタッフおよびミスコン参加者等に対して物理的暴力を行使するつもりはゼロでした(だって普通に犯罪になるし)。

 しかし、楡陵祭スタッフは当会メンバー1人につきおよそ4,5人がかりで掴みかかり、様々なやり方で一方的な暴行を加えてきました。プラカードもメガホンも強奪されました。

 そのため、私達は「ミスコン反対」と言うつもりで行きましたが、実際は殆ど「触るな」とか「暴力反対」としか叫べませんでした(なぜかあっさりステージに登ることができたメンバーは、壇上で珍妙なダンスを踊っていましたが、それはなんの妨害にもなっていないし、身内ながら意味不明な動きでした笑)

 確かに当会でもステージに突入すれば排除はされるだろうと踏んでいました。しかし、このような袋叩きの物理的暴力でもって排除されるとは思ってませんでしたし、今も不当だと思います。まだ身体中痛みます。

 もし彼らが物理的な暴力を含めて、私たちの行動を排除することに正当性があるとしたら、それはこちらがなんらかの暴力の行使をほのめかしているとか、凶器を持参しているなど、暴行を加える意図が明らかな場合に限られるのではないでしょうか。

 また、そもそも「性差別に反対する」と主張する私たちの団体が、その目的のために物理的・身体的暴力を行使すると、主催側が考えるに足るような客観的根拠がどこにあるのか、甚だ疑問です。

 にも関わらず、ステージ突入を阻止するという目的のためにここまでするのは明らかに過剰であり、おかしい。警備の名の下に行われた単なる集団暴行であり、刑事事件の範疇に入ることです。

 現場に来ていた文学部の某教授は、楡陵祭実行委員の一人に対して、「こうした民事の抗議行動に対して暴力で対応するのは、完全に刑事事件であって、もし訴えられたら君たちが負ける。それだけヤバイことをやっているという自覚があるのか」と詰め寄っていました。

 こうした楡陵祭実行委員会のやり方について、当会は法的措置の行使も含めて対応を検討しています。また動きがあれば、お知らせしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 

ツイートまとめ:楡陵祭事務局による暴行事件(1)

当会メンバーは、6月4日のミスコン開催当日、抗議のため、プラカードとメガホンを持ち、ミスコンのステージに突入しようと試みましたが、主催側から暴力で排除されました。そのことにかんして、2016/6/4(土)のツイートをまとめました。

 

 本日開催されたミスコンに対して抗議(ステージに突入)しようとしたところ、楡陵祭(北大祭)事務局側から暴行を受けました。

 楡陵祭事務局のスタッフは、ステージに向かう私たちに対してヘッドロック、押し倒す、首を絞めるなどの過剰な暴力で応答しました(メンバーの一人はステージ上から、頭から地面に落とされました)。仮にステージ突入の是非はあるとしても、事務局の対応は普通に刑事事件に相当する暴力だと言えます。

 私たちは別に暴力でミスコンを止めようとしたわけでもなく(それについては事務局スタッフの一人も同意していました)、それに対して首を絞めるなどの暴力を行使することは正当防衛とも言えないでしょう。

 メンバーの負傷具合も気になるところですが、今後はミスコンの是非問題と併せて、こうした過剰な(暴力的な)楡陵祭事務局の体制についても批判をしていきたいと思います。

 

 

「毎日がミスコン」―もうたくさんだ。差別ある日常を祭るな、呪え!

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 女性が絶えず美醜によって順位づけられる日常を私は生きている。男性もある程度そうであるが、順位づける側―順位づけられる側の力関係は男女で圧倒的に非対称になっている。テレビ、広告、小説、漫画などの大衆文化や商品を消費するにつけても、若く美しくありつづけることは女性にのみに課せられたノルマであると学習させられる。そのようなシビアで不当な立場から落ちようとする女性や、若く美しくない女性、見られる側でなく見る側・順位づける側にまわろうとする女性、自分の容姿を肯定的に評価し表明する女性は執拗に攻撃される。

 キャンパスミスコンは祭典のかたちをとるが、その祭典は、私が慣れ親しんだ性差別社会においては「非日常」にはなり得ない。ミスコンは、女性差別を看過し承認し再生産してゆく「日常」の作法を、明るく健全な雰囲気のなかで大々的にお披露目するものであると同時に、打ち毀すべき「日常」の象徴でもある。